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YUKARI NEGISHI
in PARIS
その土地の空気や匂い、そこで暮らす人々、そして季節の移ろい。
切り取られた街の物語に、それぞれの“旅するバッグ”がそっと寄り添う。
世界のどこかで過ごした旅の記憶を綴るジャーナル『SOMEWHERE』。
第2回は、ロンハーマンディレクター根岸由香里さんが訪れた、"愛すべき パリ" について。
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何度訪れても、心をつかむパリの景色
根岸さんが仕事でパリを訪れるようになって、およそ25年。
少なくとも年に4回は足を運び、これまでの訪仏回数は80回を超えるという。

写真) 限られた時間の中で訪れた、念願のオルセー美術館。
「滞在中はアポイントで埋まっているので、何度も行っているわりに美術館をゆっくり見る時間はほとんどなくて。でも今回のパリで、初めてオルセー美術館に行けました。ちょうど近くで商談があり、1時間半ほど時間が空いて『今なら行ける』と思ったんです。パリでゴッホの作品をずっと見たいと思っていたので大満足でした」
初めての場所に胸が高鳴る一方で、何度も目にしてきた景色が変わらず心をつかむこともある。

写真)ライトアップされたエッフェル塔。パリの夜を象徴する光景。
「セーヌ川をタクシーで渡ることが多いんです。昼も夜も通るのですが、アレクサンドル3世橋のあたりはゴールドの彫像が街に映えて本当に美しい。『ああ、パリに来たんだな』と感じます。
私にとってパリは、もうひとつの当たり前の景色。『戻ってきた』という感覚に近いのかもしれません。
刺激を受ける場所でありながら、心が少し落ち着く場所。『アナザースカイはどこですか?』と聞かれたら、LAと並ぶくらい、私にとってパリは特別な場所です」



写真上)オルセー美術館の時計台の内側から。
写真中)大好きな光景のひとつ、アレクサンドル3世橋。
写真下)パリに来たら飲みたいショコラショー。
そんな根岸さんが旅で大切にしているのは、滞在の拠点となる宿泊先。
チームで行くことの多い出張では、事前にエアビーを予約するという。
「今回予約したところは、広さがあり、内装も素敵でした。キッチンがついていたので、みんなで早起きして近くのパン屋さんへ行き、買ってきたパンで朝食を作ったんです。朝のちょっとした時間も気持ちよく過ごせますし、夜帰ってきてから仕事をすることもある。泊まるところは仕事のクオリティにも関わってくると思っています」
さらに旅先では、できる限り見たことのないものに触れたいと話す。新しくできたショップを訪ねたり、まだ味わったことのないものを食べたり。日本にいるとき以上に外へ出て、アンテナを広げていく。
「出張のときは効率も考えなければいけないのですが、プライベートの旅では、下調べをしすぎないようにしています。調べすぎると、『ここに行って、次はここを回る』ということ自体が目的になってしまい、その間にある大切なものを見落としてしまう気がするんです。なんとなく行きたい場所を決めておいて、あとは気持ちの赴くままに歩きながら、目に入ったお店に入る。危なくない場所なら路地裏を歩いてみたりして。そういう旅でありたいなと思っています」



写真上)おしゃれで快適だったエアビー。
写真中)エアビー近くのレストラン。
写真下)春の訪れを感じさせるミモザ。
旅は、出る前から始まっている
今回パリ出張は9日間。パッキングにも自分らしく旅を楽しむ姿勢が表れている。
「大きなスーツケース2個には、服や靴、ジュエリーなどのアイテムをたっぷり詰めていきました。ちょうどファッションウィークの時期だったので、自由に装いを楽しみたいなという思いもあって。スケジュールを見ながら、ざっくりとスタイリングを組むんです。1日目はこの服、2日目はこの服、というように絵を描きながら、1週間前くらいから考えます。そこに、気候が変わることも考えて、必要そうなものを少し足していく感じですね」
旅の必需品は、普段から持ち歩いているライカのカメラ。光の具合や時間帯などで設定を変えながら、感覚のままにシャッターを切るという。また、旅先で安心して過ごすためのアイテムも欠かせない。
「旅は安全であってこそだと思うので、常備薬や普段飲んでいるサプリも持っていきます。リラックスできる香りアイテムも必ず。飛行機の中でそっと嗅いだり、エアビーでもシュッと吹きかけたりして、心地よい空間に整えています」



写真上)荷物の多い旅にぴったりな“TANK”トート。
写真中・下)“KIT”ショルダーバッグに香りアイテムなどを忍ばせて。
数多くの旅を重ねてきた根岸さんにとって、“最高の旅”と感じるのはどんなときなのだろうか。
「『もう終わっちゃうのかあ…』と余韻が残る旅って、いいですよね。『やっと帰れる』ではなくて。仕事の旅だったとしても、そう思えることにいつもありがたみを感じています。その土地や訪れた場所、出会った人たち、そしてチームで行くからこそ生まれる会話も含めて、たくさんのものを吸収できたなと思える。帰る前日のディナーで、『あっという間だったね』『もう少しいたいね』と話しているとき、充実感に満たされて幸せな気持ちになります」
穏やかな口調で語られる根岸さんの言葉からは、旅を、そしてパリを愛する気持ちが伝わってくる。これから旅へ出たいと思っている女性へのメッセージにも、その想いがにじむ。



写真上)別のクルーや現地の友人とディナーに。
写真中)ショールームに飾られている花。
写真下)街角で出会った絵になるカフェ。
「旅は、出る前から始まっている。トランクに荷物を詰めるとき、私はその土地を想像します。この街だったら、どんな服が合うだろう。どんなふうに過ごしたいだろうって。自分の装いが、その街やシチュエーションにしっくりくると、心まで溶け込んでいくような気がするんです。だからこそ、何を詰めていくか考えるのも、旅を楽しむ大切な時間。そこにいる自分を想像しながら、出発前から旅を楽しんでほしいですね」
根岸由香里
1977年栃木県生まれ。文化服装学院卒業後、セレクトショップで企画やバイイングを経験。2008年、ロンハーマン日本1号店の立ち上げに伴いサザビーリーグへ。現在は、取締役兼ウィメンズ・ディレクターとして、国内外の買い付けやブランドディレクションを通して、ファッションを軸にしたライフスタイルを提案している。
Instagram @yukaronegishi
Ron Herman OFFICIAL SITE
TEXT : Ayako Takahashi